DreamEgg(1)
しんしんと雪が降り積もっていた寒い冬を越え、
もうすぐ暖かい日差しとともに春がやってくる。
光平は新しい一歩の準備をしはじめていた。
「この部屋ともしばらくお別れ、まあ18年間過ごした場所だ し、
いつでも帰れる場所があれば、一歩力強く踏み出せるな」
12時を過ぎ、4時間目もまもなく終了となる。
「はい、この問題解いたら、授業終了だ。
おい?水島フライングだぞ、まだ教科書片付けるな」
「はい、この問題解いたら、授業終了だ。
おい?水島フライングだぞ、まだ教科書片付けるな」
「先生、俺その問題ならとっくに解いてます、
先生それ昨日の宿題でしたよ。」
水島は先生のうっかりミスを鋭い指摘で言った。
クラスに笑い声が響く。
高3の7月に多くの運動部は引退を迎え、半年後に迫る
センター試験や私立大の受験に向け、学校の雰囲気も
徐々にではあるが、変わっていく。
水島と光平は陸上部に所属していた。
光平は長距離の選手、水島は短距離の選手。
それは2人の性格を表すものでもあった。
光平は計画的に継続性のあるコツコツタイプ、
水島は短期集中型で決断力、行動が早いタイプ。
イソップ物語のウサギとカメのようなもの。
それはそれでお互いに気が合うことが多かった。
「今日、いい天気だからテラスで弁当食べよう」
水島が光平に声をかける。テラスはちょうど2人が歩ける
スペースがある。そのスペースは座ると足が伸ばせるくらいで
居心地がよく、どこのクラスも何人かが出て食べている。
スペースがある。そのスペースは座ると足が伸ばせるくらいで
居心地がよく、どこのクラスも何人かが出て食べている。
夏の空はまるでカキ氷のようにぷかぷかと浮いている。
どこまでも続いていく空に、雲は果てしなく伸びていく。
行く当てのない気持ちのわだかまりのように・・
どこまでも続いていく空に、雲は果てしなく伸びていく。
行く当てのない気持ちのわだかまりのように・・
「暑いな最近、なんか陸上終わったら、気抜けちゃったな。
進路とか光平は決めたりした?」
進路とか光平は決めたりした?」
「まだ、よくわかんない。
周りの雰囲気にまだついていけてないし。
今やらないと、やばいとは思うんだけどね」
周りの雰囲気にまだついていけてないし。
今やらないと、やばいとは思うんだけどね」
光平はテラスのフェンス越しの空を眺めながら言った。
「俺は海外や英語に関係する学部とか、進もうかなって。
一応英語は得意なほうだし、ただ漠然とだけど、海外で
何か仕事ができたらいいなって思う。」
一応英語は得意なほうだし、ただ漠然とだけど、海外で
何か仕事ができたらいいなって思う。」
「俺は普通の会社員になるかも。
まだはっきりこれがしたいって思うこと見つけられてない。
箱根駅伝は走ってみたいけど、
大学で陸上ばっかりはかんべんだな。」
まだはっきりこれがしたいって思うこと見つけられてない。
箱根駅伝は走ってみたいけど、
大学で陸上ばっかりはかんべんだな。」
「でも箱根は、光平夢だったんじゃない?
お、今日卵焼き2個あるじゃん。1個もらい」
お、今日卵焼き2個あるじゃん。1個もらい」
話の途中で水島は光平の弁当に箸を忍ばせた。
「まあ、昔の夢だよ。ほんと水島、俺のうちの
卵焼き好きだよな。俺も好きだけど。
母さんの得意料理なんだよな。」
卵焼きを口に含みながら、水島は何か思いついたようだった。
「来週から夏期講習はじまるな。
講習が終わったら学校で自習しようぜ。」
講習が終わったら学校で自習しようぜ。」
「お、そうでもしないとやらないもんな。
いいじゃん、やるやる。」
いいじゃん、やるやる。」
子供みたくはしゃいで光平は返事をした。
「ただいま、母さん今日のご飯何?」
「今日はコロッケ。やけに今日は元気がいいね。
何か学校であったの?」
何か学校であったの?」
「別に何もないよ。
夏休みの夏期講習終わったら放課後は教室で
自習してくるから、帰り7時過ぎになるわ。
あと母さん、弁当のご飯の量減らしといてよ。
もう部活終えたからそんな食べないって。」
夏休みの夏期講習終わったら放課後は教室で
自習してくるから、帰り7時過ぎになるわ。
あと母さん、弁当のご飯の量減らしといてよ。
もう部活終えたからそんな食べないって。」
「ごめん、ごめん、ついつい頑張りすぎちゃて。
次から気をつけまーす。」
次から気をつけまーす。」
うっかりミスの多い母。そんな母の背中を見つつ
光平はコツコツとやるようになったのかもしれない。
夕飯を終えると光平は自分の部屋に向かった。
電気のついていない部屋は暗い。でも窓から見える
外の色は完全な黒ではない。外は黒に近い青が広がっている。
「これから、期末試験の結果返すぞ。
呼ばれた奴から取りに来い。阿部、及川・・・」
光平はコツコツとやるようになったのかもしれない。
夕飯を終えると光平は自分の部屋に向かった。
電気のついていない部屋は暗い。でも窓から見える
外の色は完全な黒ではない。外は黒に近い青が広がっている。
「これから、期末試験の結果返すぞ。
呼ばれた奴から取りに来い。阿部、及川・・・」
それぞれにテストの結果が返ってくる。
昔の小学生の頃とも違い、教室がざわつくことはそうない。
高校3年ともなり、その結果は自分の進路に影響してくる。
点数がよいわるいは顔に出るものだ。
昔の小学生の頃とも違い、教室がざわつくことはそうない。
高校3年ともなり、その結果は自分の進路に影響してくる。
点数がよいわるいは顔に出るものだ。
「まあ、点数がよかった奴も、悪かった奴も
しっかり復習しておくように。
この前の3者面談で話したように、夏が勝負だぞ。
明日からの夏期講習は遅れてこないように。
おい水島、顔が死んでるぞ。
今日の夕飯は明日からの元気出るようにみんなで
ラーメン食べに行くぞ。学校の正門前に6時に集合だ」
しっかり復習しておくように。
この前の3者面談で話したように、夏が勝負だぞ。
明日からの夏期講習は遅れてこないように。
おい水島、顔が死んでるぞ。
今日の夕飯は明日からの元気出るようにみんなで
ラーメン食べに行くぞ。学校の正門前に6時に集合だ」
担任の渡辺先生はみんなの元気を奪ってしまってるかのような声で言った。
夏の六時といっても外はまだ明るい。
普段行き通う道であってもクラスみんなでぞろぞろと歩けば、
違う風景に見える。夕日に重なりながら、
十字路の角に赤いのれんが見える。
「光平は良かっただろう?
俺なんか得意の英語も点とれてなかった。
今日はしっかり落ち込んで明日からは超元気に頑張るから。」
俺なんか得意の英語も点とれてなかった。
今日はしっかり落ち込んで明日からは超元気に頑張るから。」
「水島は一夜漬けばっかだもん。
めちゃくちゃいいとは言わないけど、
2週間前からコツコツやってたから。
それにしても先生がラーメンおごるなんて珍しいよな。」
めちゃくちゃいいとは言わないけど、
2週間前からコツコツやってたから。
それにしても先生がラーメンおごるなんて珍しいよな。」
2人は驚いた様子で話をすすめた。
話も弾みあっという間に赤いのれんの入り口へとやってきた。
話も弾みあっという間に赤いのれんの入り口へとやってきた。
「実は、前に何度か見てたんだけど、
ここ先生の友達が始めたんだって。
何でも高校のときに約束したみたいで、
友達が料理人として店を出したら、
渡辺先生は教え子連れて食べに行くってしたらしいんだ。
連絡は取り合っても会うことはしなかった。
高校卒業して12年ぶりに会ったんだって。」
店内は30人ほどの高校生でにぎやかになりつつあった。
「ほんとに?約束の場所の友情の味か。
うん、ここめっちゃくちゃおいしいはずだよな。」
「ラーメン食べてエンジン全開といきますか。
明日から講習頑張ろうぜ。」
「おう、なんか雰囲気出てきたな、受験モード。」
夏期講習は90分の4コマ。午前と午後2コマずつ。
普段の教室ではなく大講義室に100人ぐらいで受ける。
夏の太陽の暑い日ざしとは違い、講義室は
受験モードになりつつある生徒の熱気で暑さを増していった。
「今日は集中して何に取り組む?」
数学のファイルを持ちながら2人は渡り廊下を歩いていた。
「今日は英語の過去問やろう。
勝負ね水島。英語得意だから負けたらカキ氷おごれよ。」
勝負ね水島。英語得意だから負けたらカキ氷おごれよ。」
「ははーん。英語フリークに勝負を挑んでくるか。
宣言しておく、俺は勝ってブルーハワイをおごってもらうのだ。」
宣言しておく、俺は勝ってブルーハワイをおごってもらうのだ。」
光平と水島は互いに切磋琢磨しながら受験生として意識を高め、
当たり前の生活を過ごしていった。
「母さん、ご飯おかわり。
頭使ってばっかりだとお腹空くんだよね。」
「はいよ、受験生。普通受験生だと
ナーバスになって食べなくなるんじゃないのかね。」
ナーバスになって食べなくなるんじゃないのかね。」
母は驚いた様子で、ご飯をよそい始めた。
「俺もそう思ってたんだけどね。
数学なんか腹ペコだと計算ミスもするのさ。」
数学なんか腹ペコだと計算ミスもするのさ。」
「最近、父さんも競馬があたらないね、
ここはひとつ、1−2の光平と水島くんに投資かな。
2人とも受かったら焼肉に行こう。」
ここはひとつ、1−2の光平と水島くんに投資かな。
2人とも受かったら焼肉に行こう。」
「父さん訳わかんないよ、ほかに何番まであるの?
それは万馬券かもよ。父さんと母さんのいい調教があれば、
もしかするとなるかも。でも俺頑張るから。」
それは万馬券かもよ。父さんと母さんのいい調教があれば、
もしかするとなるかも。でも俺頑張るから。」
受験生といっても家族が気を使うことなく、
食事の時間は楽しい時間を過ごした。
部屋に戻った光平は好きな曲を聴いてから、勉強に取り組む。
光平の好きな曲はMr.children「終わりなき旅」。
学校では課外に自習、家に着いてからも、
家族のサポートもあり順調に受験勉強は進んでいった。
あの出来事が起こるまでは。
食事の時間は楽しい時間を過ごした。
部屋に戻った光平は好きな曲を聴いてから、勉強に取り組む。
光平の好きな曲はMr.children「終わりなき旅」。
学校では課外に自習、家に着いてからも、
家族のサポートもあり順調に受験勉強は進んでいった。
あの出来事が起こるまでは。
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